ベーシックインカム 101

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ベーシックインカムはインフレを引き起こすのか

元記事: Will basic income cause inflation? | BIEN

学生たちの主張

先日、NCCU*1で行われたBIについてのディスカッションで司会を務めた。参加者はさまざまな国からの学生で、ベーシックインカム (BI) がインフレを起こすか否かで激しい議論が行われた。一部の参加者たちは購買力の向上は商品の需要を押し上げ、結果価格も上昇させると懸念を示した。物価の上昇はBIから得られる人々の購買力を徐々に下げていく。

学者たちの見解

この主張に根拠があるのかを、私は3人のBI専門家に確認を取った。『ベーシックインカムの倫理と経済理論』*2の共著者たちに、研究からBIとインフレについて尋ねた。

答えは、「場合による」だった。

総じて、物価は上昇しうるが、それはBIがどう実施されるかによるという点で学識者たちの意見は同じだった。

BI研究者はまだ誰もインフレに注視してこなかったし、物価への影響を測る十分な実験も行われたことがないため、体系だった知識は得られていない。

インフレを引き起こしうる条件とは

モンマス大学*3の経済学および金融学の教授だったスティーブン・プレスマン博士は、「理論に頼らずにインフレが起きうるかの結論を出すことはできないだろう」と語った。

ニューヨーク市立大学ハンター校*4ソーシャルワーク・シルベルマン学部准教授のマイケル・ルイス博士は「複数の変数がインフレには影響する」と付け加えた。仮にBI導入後に政府支出が削減されれば、インフレに上下両方の影響を同時に及ぼす。

プレスマンはBIによるインフレには「経済全体の状態とBIがいかに大規模に実施されるかによる」と述べた。

プレスマンによると、いくつかのシナリオが考えうる。

労働者と企業がもたらすインフレ要因

経済が完全雇用に近ければBIは「雇用よりも物価を押し上げる」。また、BIにより獲得される収入は貧困層の人々に行き渡ることから「低収入の人々は追加で得た収入を使い切ってしまいがち」であることから総支出はインフレとともに上昇していく。

供給側の視点からは2つの重要なインフレ要因がある。税金と労働者だ。

仮にBIの財源が売上税あるいはVATから拠出されるとすれば、物価上昇が起こる。また、BIが賃金上昇圧力となればなるほど、企業は「賃金上昇コストを商品価格の上昇によって顧客に転嫁しようとするだろう」。

インフレへの過剰な恐れは禁物

一方、BI以外の政府支出の削減が財源となれば、「インフレへの影響はほんのわずかゼロにとどまる」。

BIEN共同議長でジョージタウン大学SFSカタール*5准教授のカール・ワイダークイスト博士はデンマークの経済はBI並みの福祉が労働者の利益を奪い去ってしまうようなインフレを引き起こしていないことを示しているという。

「BI支出が特別に他の出費よりもインフレを起こしやすいということはまったくない」とワイダークイストはいう。「BIによって生じるインフレ圧力を税金や借入によって中和することは、軍事費や他の出費の場合よりも容易である」。

プレスマンによると、インフレには経済にとってそれほど悪くないものもある。1990年代日本のデフレスパイラルのときのように、インフレは経済を助ける役割もするからである。

変動性のベーシックインカム

政策立案者は、BIの給付金を経済状況に応じて調整することを考えてみれば有益かもしれない。

「変動性BIも考慮に値する。失業が上昇するにつれて増加し、経済が完全雇用に近づくにつれて下がる。これはいかなるインフレ圧力も減らすだろう」とプレスマンは述べた。

さらなる研究は依然必要であるが、インフレ価格には多数の要因があるためBIは実質的にインフレーションに寄与しない。

「政策問題や財政および金融政策は、より平等な社会政策が低いインフレとの一致を確実にすることができるだろう」とワイダークイストが語った。

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