ベーシックインカム 101

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‪インフレを引き起こさずにベーシックインカムを実現するには‬

ベーシックインカムとインフレの関係

ベーシックインカム (UBI) は物価上昇 (inflation) を引き起こすのか? 『Utopia for Realists』の著者であるラトガース・ブレグマンの Quora での回答の要旨は次の3点だ。

  • ベーシッカムインカムがインフレを引き起こすかは原資の調達方法による
  • たんに紙幣を刷って配るヘリコプターマネーと呼ばれる方法の場合は間違いなくインフレを引き起こす
  • 現行の社会保障制度と同じように税を財源とした場合は、財とサービスに見合った分の資金しか出回らずインフレにならない
    • ただし、それは納税者が働くのをやめてしまうと成り立たなくなり、インフレを引き起こす
    • 実際のところ人はベーシッカムインカムを受け取っても働くのをやめない
    • その科学的なエビデンスについて著書『Utopia for Realists』にて3章分のページを割いて書いた

Ref. Won’t a universal basic income raise inflation? - Quora

収支のバランスが取れればインフレは起きない

著作の宣伝は置いておくとしても、彼の回答は議論のベースとして優れている。彼の主張は、長期的に安定してベーシックインカムを供給するには、人々の手に渡る量と同額を税金で賄うしかないというシンプルなものである。

直感的には、下掲のグラフが理解の助けになる。図中の2つの三角形の面積が等しいとき、インフレは起こらない。

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Ref. Finland plans to give every citizen 800 euros a month and scrap benefits : worldnews

この図はフィンランドでの1例だが、ベーシックインカムが支出の1つの形態でしかないのと同じく、図中の所得税 (Income Tax) も1つの徴税形態でしかない。例えば所得税でなくとも相続税などより時間軸の長い資産課税も考えうる。いずれにせよ、収支さえ帳尻があえばインフレは起こらない。

ここで1つ留意したいのは、税額はトータルで支出と帳尻が合いさえすればよいということだ。極論では、人口のトップ1%が税収のほぼ全額を賄っていてもベーシックインカムはインフレなしに成立するともいえる。これはロボットによる自動化がもたらす資本の集中を考慮すればそれほど非現実的なシナリオでもないだろう。

こうして見てみると、ベーシックインカムの実現には再配分の要件の醸成が避けられないことがよく分かる。

そもそもインフレは避けるべきものなのか

インフレは人々の財産を毀損する忌むべき存在だろうか? テーマを絞るため当記事ではインフレ自体の是非は細やかに議論しないでおくが、インフレは大まかに次の通り分類でき、どうやら前者の状態が望ましいらしいと述べるにとどめておく。

  • 年率 1-5% くらいの「マイルド・インフレ」
  • それ以上。年率 26% 超の物価上昇「ハイパー・インフレ」を含む(他国への賠償金や無計画な貨幣の増発などが要因)

なお、本稿では長期的なモデルを扱うにはヘリコプターマネーは役不足であると例示しているが、シニョリッジを断続的に税金を肩代わりする一手段として見る分には問題ないだろう。