ベーシックインカム 101

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ベーシックインカムを「最低所得」と呼ぶ利点

ベーシックインカムを直訳すると「基礎所得」やそれに類する言葉が候補に上がるだろう。

しかし、ここでは直訳ではなくUBI (universal basic income; ベーシックインカムのこと) を政策としてパッケージングするときに適切な名前を考えたい。言うまでもなく、絶妙な名称は概念の理解を容易にし、ついては政策の実現を早める可能性さえ秘めている。

最低所得の利点

結論としては、本稿では「最低所得 (minimum income)」を推したい。理由は3つある。

  1. すでに広い認知を獲得している「最低賃金 (minimum wage)」から類推できるためUBIの概要が伝わりやすい。‬
  2. 憲法第25条「健康で文化的な最低限度の生活」という条文を参照できる。国家の根幹をなす政策に適した命名である。
  3. あくまで「最低」であるため、出費に無駄がない印象を与える。ムダ遣いなのではないかという警戒を避けられる。

こういった利点から「最低所得」という名称は支持者を増やすのに有利に働くだろう。

ガイ・スタンディングの議論

ベーシックインカムの国際組織BIENの設立者であるガイ・スタンディングは著書『ベーシックインカムへの道』でUBIの名称について1節を割り当てている。 彼は「最低所得」を資産調査をともなう印象を招きかねないとして否定的に扱っている。その代わりにUBIがもつ社会正義の側面を重視して「社会配当」を推している。思想としては筋が通っており、いかにも学者好みの名称だ。しかし、一方で有権者に「よく分からない制度」という印象を抱かせてしまうのは得策とはいえない。 本項の主張としては、初期段階は《最低所得》として導入して(実際に理想とする給付額よりも少額から始めればよいだろう)、制度が成熟した頃合いを見計らって《社会配当》などより適切な用語を採用することを提案する。むろん、ミーンズテストは行わないことが前提となる。

所得補償について

なお、本ブログでは「所得補償」という呼称を用いていることもある。正確にいうとUBIは所得保障を実現する1手段として位置付けている。また、「所得補償」はUBIと性質が近しい保険商品の一般名称でもある。この点については項をあらためて議論したい。